一般的なレンズにおいて完全に焦点の合っている点は1点です。
(テレセントリックレンズのような精密測定用の特殊なレンズは除きます。)
完全に焦点のあっている点の前後に焦点ボケの少ない領域があります。
これを焦点深度といいます。
完全に焦点の合っている点から外れると徐々にボケていきます。どこまでが実用範囲かは個人の主観になってしまいます。 光路を絞るとこのボケていく度合をゆるやかにすることができます。 但し、絞ることにより、撮像が暗くなるので、あまり倍率の高いレンズでは使えません。
左写真は弊社の絞り付USBマイクロスコープ です。 絞り付USBマイクロスコープ |
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この絞り付マイクロスコープで開放時と絞った時の画像を比較します。
(絞りを絞ると焦点深度が深くなります。)
<50倍時>
●ガラススケール
0.5mmピッチのガラススケールを45度に傾けて、真上から観察します。
<絞りを開放にした時> | <最大に絞った時> |
45度に傾けているので 1/1.41をかけると焦点深度となります。
どこまで焦点があっているかは個人の主観となりますが、
4ピッチ(=2mm)が合っていると判断するならば2mm×(1/1.41)=1.42mmが焦点深度と言えます。
●基板の場合
この50倍の状態で基板を45度に傾けて観察してみます。
(1.6mmX0.8mmの電子部品が1mmピッチに並んでいます。)
<絞りを開放にした時> | <最大に絞った時> |
<100倍時>
●ガラススケール
ご参考までに100倍時も確認しました。
倍率が高くなるのでガラススケールは0.2mmピッチのものに変更しております。
<絞りを開放にした時> | <最大に絞った時> |
この範囲が実用範囲と判断すれば 1.2mm×(1/1.41)=0.85mmとなります。
絞りを絞るとレンズは暗くなり、解像度も落ちますのでご注意ください。
(詳細は「NA(開口数)とは」を御参照ください。)
3.焦点深度/被写界深度を深くする裏技
◆解説:レンズの焦点深度/被写界深度について
裏技紹介の前に、レンズの焦点深度について、解説します。
焦点深度はDOF(Depth of Focuse)とも表現されます。
空気中の場合(N=1) DOF=(0.55/(2×NA²))+(1/M×K/NA) |
(式の解説)
- 1項目は「分解能から決まる項目」です。
- 2項目の“K”は「観察者の目の分解能から決まる定数」で個人差があります。
- “M”は「レンズの総合倍率」です。
ここから言えることは、焦点深度を深くするためには、
倍率を下げるか、NAを下げるしか方法はありません。
同じ倍率で言えば、NAを下げるしか方法はなくなります。
下記は、同じメーカー、同じシリーズの仕様で
左がメガピクセル対応レンズ、右が分解能の低い汎用レンズです。
同じ倍率、同じ焦点距離のレンズで比較すると、汎用レンズの焦点深度が深くなります。
同一レンズでNAを下げるには、絞りを絞ることが唯一の方法となります。
レンズが異なる場合、倍率が同じであれば、焦点距離が長い方が
NAが下がり、焦点深度は深くなります。
◆裏技紹介:「絞り」と「デジタルズーム」
50倍程度までであれば、「絞り」と「デジタルズーム」を併用することで
簡易的に固定焦点レンズで作ったマイクロスコープでも
深い焦点深度/被写界深度を実現できます。
但し、「絞り」も「デジタルズーム」も解像度を落とす方向なので
4K(800万画素)程度のカメラとそれに対応する高解像度レンズを使うことを
お勧めします。
4Kカメラ(800万画素)に1000万画素対応の50mmレンズを装着、
50倍のマクロ撮影ができるように接写リングを入れて比較撮影しました。
上記と同じ基板を同じ条件で撮影
(1)50倍時 レンズの絞りだけで焦点深度/被写界深度を調整
<絞りを開放にした時> | <最大に絞った時> |
(2)デジタル2倍で50倍になるように調整後、
レンズの絞りで焦点深度/被写界深度を調整
<絞りを開放にした時> | <最大に絞った時> |
(3)裏技利用時のメリット
固定焦点レンズを使っているので、ズームはできません。
但し、マクロズームレンズのように作動距離が固定されていないので
W.D.の長距離化、システムの小型化、被写界深度の調性 等の融通が利きます。
レンズの選択によって、5倍~50倍程度の任意の倍率(固定)にできます。
4.まとめ
完全に焦点のあっている点の前後に焦点ボケの少ない領域を被写界深度といいます。
どこまでが実用範囲かは個人の主観になってしまいます。
倍程度までであれば、「絞り」と「デジタルズーム」を併用することで簡易的に固定焦点レンズで作ったマイクロスコープでも深い焦点深度/被写界深度を実現できます。